2007年9月14日、東京大学理学部7号館にてPenCommunityのキックオフとなるセミナーを開催しました。国立循環器病センター研究所の中沢一雄氏、富士通研究所の石垣一司氏をお招きして、ペン入力に関するプロジェクトの発表をして頂きました。その講演の模様をセミナーレポートの形で紹介します。

■手書き電子カルテの活用 中沢一雄氏・国立循環器病センター研究所
ファーストセッションは、国立循環器病センター研究所の中沢一雄氏による、ペンコンピューティングを用いた電子カルテインターフェースについての話。手書き電子カルテシステムSerpentのデモを交えた紹介や、ペンIDによる認証システム、電子カルテの現状などの話があった。
Serpent

Serpentは、ペン入力型インターフェースを用いて、手軽な入力を可能にした手書き電子カルテシステムだ。従来型の電子カルテに比べて、入力負荷が小さく、患者とコミュニケーションを取りながら、手軽に診療録を残すことが出来る。領域選択や位置の調整、3次元シェーマ作成などにより支援される手書き診療録、文字認識に支援されるサマリ作成などの機能がある。2003年度にグッドデザイン賞を受賞した。
ベクトル型シェーマを使った心臓カテーテル検査所見入力システム

心臓カテーテルの検査所見入力をグラフィカルに編集することが出来るシステム。血管には個人差があるのでテキストだと面倒になる作業を、簡単に行うことが出来る。
ペンIDによる認証システム

各ペンに固有のIDを付け、誰がどの部分を書いたのかを残すことにより、複数人による記載やユビキタス環境を実現することが出来る。ペン入力インターフェースだとこういうことも可能になる。
最後に、ペン入力インターフェースの利点と課題として以下のものが挙げられていたので記す。
ペン入力インターフェースの利点
1・文章と図が混在する診察記事のように情報の規格化がしにくい、従来の電子カルテのシステムの枠組みでは上手く入力できない情報が入力できる。
2.片手だけで操作が可能であり、診察時など入力だけに集中できない場合でも簡便に入力することができる。
3.手書き入力によって記載時の臨場感や緊迫感などの状況が伝わり易い。
4.完全な文章ではない直感的メモや連想記憶にも有効であり、思考過程を補助することができる。
5.手書き入力と既存のオーダリングシステムの組み合わせにより、病院の規模や目的などに応じた柔軟なシステム構築が可能である。
6.電子ペンにIDをつけることで、ユビキタス環境やセキュリティ機能の向上につなげられる。
ペン入力インターフェースの課題
1.電子ペンの操作に慣れる必要がある。紙にペンで書くようにはいかない。
2.電子カルテシステムとしての実績がない。
3.ややコスト高である。既存のシステムと違いすぎてパッケージに入りづらい。
4.汚い字をどうするのか。
■富士通研究所のペン入力への取り組み(公共、自治体、教育) 石垣一司氏・富士通研究所
セカンドセッションは、富士通研究所の石垣一司氏による、ペン入力の業務アプリケーションへの応用と教育への利用についての話。現状、ペン入力にはキーボードなどの代替手段が存在し、思ったように市場が広がらない。そのような中、「手書きでもできる、手書きのほうが自然」ではだめ、「手書きでしかできない、手書きが必須」が必要との考えのもと、富士通研究所がこれまでに考えてきたペン入力の応用例の話であった。
手書き漢字検索

自治体ではIMEを超える漢字を扱わなければならない。使える漢字なのかを判定する必要がある。こういった文字をかな漢字変換で探すのは大変。そこで手書きによる漢字検索が向いている。
手書き電子教材

書くということによって学習を支援する。筆順をチェックして正しい書き方を覚えさせるということや、過去の学習履歴を参照して、間違えたものを徹底的に学習させるといったようなことが出来る。
上の写真は、尾道市の小学校と協力して、評価実験を行った結果。ノートを用いた学習より、手書き電子教材の方が少ない練習量で高い学習効果を得られるという結果が出ている。
手書き電子黒板 @BOARD

持ち歩けるタブレットPCと無線で繋がれた電子黒板。USBカメラで児童ノートを取り込み、ノート指導をするというようなことが出来る。
最後に、石垣一司氏によるまとめ
任天堂DSの登場により、ペン入力が認知されてきた。多種、多様なハードが登場しつつあり、ペン入力の適用領域は確実に拡大しつつある。
文字を入力するという効率ではペン入力はキーボードにかなわない。既存の代替手段がある領域をペンで置き換えても普及は難しい。
しかし、ある目的を達成するために、ペン入力が効率的な適用分野は存在する。その一つが教育。
ペン入力が効率的な適用分野を開拓し、使える応用システムを開発していきましょう。
■ディスカッション
最後のセッションは、小グループに分かれてディスカッションと講演者への質問タイム。
以上でセミナーのプログラムは終了である。参加人数は40名で、大学所属の研究者、企業所属の方など様々なバックグラウンドを持った人が集まった。