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任研究室での取り組み:ペンによる操作技法 任向実 2007/11/01

ペンインタフェースの研究内容も多岐にわたるが、それらの分類として、ペンをどんな目的に使用するかという視点がある。ペンを用いる目的は、書(描)くこと(writing or drawing)、指すこと(pointing)、操ること(manipulation)に大分類できる。書(描)くことは文字どおり文や絵などを書(描)くことを、指すことは空間上の点(または表示された対象)を指定することを、操ることは空間上で指定された対象に操作(移動、変形など)を加えることを意味する。本研究室の近年の研究の一部は、ペンで指すこと、操ること(以降、ペン操作技法と呼ぶ)である。


現在、市場の多くのペンアプリケーションは単なるキーボードとマウス用の操作法をそのまま流用しているため、ペン入力自身の対話モデルは従来のGUI (Graphical User Interface)用の WIMP (Window, Icon, Mouse/Menu, Pull-down Menu/Pointer) インタフェース程度にとどまっている。そのため、ペン操作技法に関する研究は文字認識・スケッチの研究に比べてそれほど行われていないのが現状である。


そこで、我々のグループでは、ペン入力の優位性と直接指示、直接操作という特長、特にモバイル環境など)を生かした、様々なペンによる操作技法を研究している。


■ZWPS:ペン入力システム画面上の(とても小さい)ターゲットを迅速かつ正確に選択する方式
ペン・デバイス(例えばTablet PC)は、指や電子ペンを用いることで直接的にターゲットの操作が可能である。ターゲットが非常に小さいとき、特にピクセルレベルのターゲットの選択を電子ペンや指で指示することは困難である。現在のアプリケーション(例えばPhotoshop等)は、この問題を拡大表示して選択するという手法にて解決している。具体的には、デジタル地図にある点(例えば鉄道の駅)からもう1つの点(例えば大学)まで正確な線を描画する場合、ユーザは、ある点近くをクリックすることで地図を拡大表示し、始点となるポイントをクリックする。そして、もう1つの点を見つけるために縮小し、もう1つの点近くをクリックすることで再び拡大表示し、終点となるポイントをクリックする。最後に両方の点を見るためにさらに縮小する、といった操作が必要で、これらはすべてユーザに大変な手間をかけることになる。さらに拡大操作は、ユーザが詳細な場所を見失う可能性も秘めており、この拡大と縮小の切り替えはユーザの集中を妨げることにもなる。
そこで、我々はペン入力システム画面上の(とても小さい)ターゲットをペンで選択する方式「ZWPS」を考案した(図1)。ZWPSのアルゴリズムは、ペン先の圧力情報を利用し、ターゲットが小さいとき、ペン先を中心にしたある一定の範囲内のターゲットを拡大させ、ターゲット上でペンを離すことで、ターゲットを選択するという仕組みである。


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図1:ZWPS


■Rubber-Line-Sweep、Line-String、Coupling with Pressure:複数のターゲットを選択するための手法
現在、GUIにおける基本的なコンピュータ操作の選択タスクは、単数のターゲットを選択するタスクと複数のターゲットを選択するタスクを含んでいる。単数のターゲット選択は一般的にタップによって実行される。複数のターゲット選択は、Rubber-band boxを使用して選択されるのが一般的である。Rubber-band boxの動作を図2cに示す。Rubber-band boxは長方形の領域をドラッグにより斜め方向に拡張することで選択する。長方形の領域にあるターゲットは選択状態にあるため強調表示される。Rubber-band boxの明らかな欠点は長方形の範囲に含まれないターゲットの選択が困難であることである。さらに、Rubber-band boxは長方形の領域から望まないターゲットを除外することがさらなるクリック、タップ、及び他の操作なしでは不可能なである。そのため、不規則に配列された複数のターゲットを選択するときは、ユーザは“Ctrl”キーとRubber-band boxを同時に使用して様々な選択タスクを実施することがある。こうした理由により、Rubber-band boxは複数のターゲット選択におけるユーザのパフォーマンスに制限をかけている。
そこで、我々は複数のターゲットの取得効率を高めるために3つの新しい線をベースにした手法(Rubber-Line-Sweep、Line-String、及びCoupling-With-Pressure)を考案した。Rubber-Line-Sweepは“直線型”選択技法(図2a)、Line-Stringは“自由曲線型”選択技法(図2b)である。これらの手法で、不規則な配置の複数のターゲットを選択するためにRubber Lineやストロークを使用する。さらに、操作能力と柔軟性を向上させるために2つの選択手法を合わせた手法Coupling with Pressureも提案した。Coupling with Pressureのアルゴリズムは、直線型選択技法(図2a)と自由曲線型選択技法(図2b)の両者を、ペン先の圧力情報を利用し自由に切り替える機能をもち、選択対象となるターゲット群の配列に合わせた操作法で選択操作を行うという仕組みである。これらの3つの手法は、従来のRubber-band box法(図2c)より、不規則に配列されたマルチターゲット群を柔軟に選択できる。


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図2:(a) Rubber-Line-Sweep、(b) Line-String、(c) Rubber-band box


以上の操作技法は以下のホームページでビデオをご覧になっていただけます。これからも関連の成果をホームページに公開していきますので、ぜひご覧ください。
http://www.info.kochi-tech.ac.jp/ren/PenProject/


余談:
この研究提案は、本年3月にすでに情報処理学会学会誌に投稿し、12月の特集に掲載される予定です。査読者から、我々のideaはBaudischらのidea(http://research.microsoft.com/displayArticle.aspx?0rc=n&id=1709)に非常に似ているが、我々の提案は面白いとコメントをいただきました。投稿はBaudischらの論文が5月に出る前でした。実はこの仕事は2006年3月締め切りのACM UISTという国際会議にも出しました。結局不採録でしたが、われわれのidea自体にはreviewer 全員からよい評価いただきました。