2007年12月 更新情報
| 東京大学マイクロソフト寄附研究部門の取り組み:タブレットPC用ソフトウェアを使った教養教育 | 望月 俊男 | 2007/12/04 |
東京大学では,マイクロソフト株式会社の寄附を受けて2006年度から3年間,高等教育支援のためのソフトウェア開発を行っています.現在,2つのソフトウェアを公開し,東京大学の授業などで実験的に利用しています.今回のトピックでは,このソフトウェアを簡単にご紹介します.
■NHKアーカイブスの映像を探索・視聴・関係づけるソフトウェア「Video Explorer」
NHKアーカイブス(http://www.nhk.or.jp/archives/)には,環境問題,学力問題,技術革新,政治情勢,世界情勢などの様々な領域の知識が眠っています.MEET Video Explorerは,この多様な映像を視聴して,環境問題や,学力問題,技術革新などの社会的事象が,各国・各時代で,どのように語られているのかを整理することができるソフトウェアです.
学生は映像を視聴しながら,その映像の代表画像を使ってマップ上に関係図を作っていきます.そうすると,映像で語られていることに対する自分の疑問や,映像では知ることができた点/できなかった点ことが整理できます.こうした活動を通して,次に何を調べていくべきか,関心の焦点化を支援していきます.
■電子的文書を使って批判的読解力を育成する「eJournalPlus」
問題関心を焦点化する上では,映像だけでは事足りません.様々な文献を読み込み,映像で焦点化した問題意識を,さらに明確なものにしていく必要があります.
MEET eJournalPlusは,電子的文書からマップを作成することができるソフトウェアです.本に線を引いたり、読みながらノートに自分の考えをまとめるのと同様の学習ができます.タブレットPCのペンを使って,電子的文章に線を引くとともに,線が引かれた部分からドラッグ&ドロップでマップ上に貼り付けて,構造図を作ることができます.論点と論拠の論理的関係を整理するだけではなく,自分の意見も構造図中に記載することができます.最後には,できあがった論点マップと,そこに関連づけられた自分の意見をもとに,レポートを執筆することができます.
■全学自由ゼミナール「映像と文献で見る学力論」
マイクロソフト先進教育環境寄附研究部門では,実証実験の授業として,東京大学教養学部の1,2年生向けに「全学自由ゼミナール」を開講しています.この授業では,様々な時代や国で学力がどのように考えられてきたかを,NHKアーカイブスの50年の映像クリップをもとに視聴し,学力のあり方について議論しました.
その後,eJournalPlusを活用して学力問題に関する基本文献を読んでいきます.映像と基本文献の関係を整理して,現在議論されている学力論の論点と,論争のポイントを明らかにしていきます.
ペンを使って考えを整理する上で,コンセプトマップと呼ばれる思考の整理方法は,とても親和性が高いものとなっています.大学生以上に求められるような高次の分析的推論力や発想力を支援する上でもコンセプトマップは有効であり,映像や文章など多様なメディアの学習リソースを構造化することで,学生の知識構築・創造力を育むことができると思われます.
12月上旬現在,まだ授業を行っている最中です.学生さん達が映像や文献をもとに「学力論」という魑魅魍魎(ちみもうりょう)な言説を分析して,それぞれの立場から「学力とは何か」ということを真剣に考えているところです.
【参考URL】
http://mainichi.jp/life/electronics/news/20071130mog00m100081000c.html
http://journal.mycom.co.jp/news/2007/12/01/001/index.html
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20071203/288650/
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070215/262183/
