2008年07月 更新情報
| 第3回セミナー:陰山英男先生からのメッセージ | 事務局 | 2008/07/14 |
講演によせて
教育へのICT機器活用への本格的な動きが、ここに来てようやく広がってきたように思われる。私のかかわっているところでも、和歌山市や京都府八幡市、山陽小野田市など、導入が進んでいる。
なぜ、今なのか。私は、それがパソコンの能力がようやく学力を高めることのできるレベルに達したことが一番の理由だと考える。具体的に言うと、ペン入力の実用化である。
MS−DOSの時代から、私も授業へのパソコン活用を模索してきていた。いろいろ話題にしていただいた兵庫県の山口小学校だが、私がそこに赴任したひとつの理由は、当時としては珍しく、自由に使えるパソコンがあったからだ。そして、山口小学校に赴任すると同時に、私も50万円かけてパソコンを買った。
だが、その意欲とは裏腹に、当時の結論は、授業でのパソコン活用はまだ無理だというものだった。なぜなら、学習ツ−ルとしてパソコンは鉛筆とノ−ト以下だったからだ。大きな機械で立ち上げまで時間もかかり、学習にとってもっとも重要な「書く」という作業ができない。正直なところ、当時のパソコンはやっかいなお荷物でしかなかった。ただ、デ−タ処理をしてグラフを自在に作ることができる画期的な道具だったので、大活躍したのが生活習慣アンケ−トの処理だった。当分はこうした事務処理の道具として活用し、文房具として本格的に使える段階まで待とうと思った。パソコンはとんでもない金食い虫でもあったからだ。
私は、パソコンが授業活用されるようになる条件を、紙よりも使いやすくなることと安くなることと考えた。中でも、ペン入力が自在にできることがもっとも重要な条件と考えた。
そして、それまでの間は、紙でできることを最大限追求した。いつかは、パソコンが学習道具として中核となる日がくると思ったが、それまでに準備しなければいけないことは、基本的な教育技術そのものだと考えたからだ。
学習用パソコンは優れたパソコン技術と優れた教育技術が、きれいに融合されてこそ、真価を発揮する。だから、その日のために教育技術を磨くのである。ただ、学力作りにこだわった実践から出てきた結論は意外なものであった。
その結論とは、子どもを伸ばすのにもっとも有効な方法は、「限られた内容を、単純な方法で、徹底的に反復すること。」だったのだ。これは、まさしくパソコンのもっとも得意とすることである。だが、ドッグイヤ−と言われるパソコンの進化にあっても、なかなかその段階は来ない。その間に、学力低下問題が提起され、私は忙殺される。いつしか、パソコンのことは、頭の中から消えていた。
やがて、運命のイタズラもあり、その後私は尾道市立土堂小学校の校長となる。その実践に悪戦苦闘する中、あるICTメ−カ−がペン入力の新しいエンジンをたずさえて私を訪ねる。これによって、しばらく眠っていたパソコン熱がよみがえることになる。
私は説明を一通り聞いたが、当時はそれどころではなかった。しっかり聞いていなかった。だがその翌日、朝目覚めたとき、その説明を思い出しながら、いきなりひらめいた。ペン入力ができ、通信ができ、しかも小さいという学習用パソコンをイメ−ジしたとき、それを中核とした教育全体のシステムが一気に思い浮かんだ。
教育機器としてICTを導入しても、私は費用を上回る成果を上げるのは難しいと考えている。教育技術と融合し、さらにシステムとして機能してこそ、意味がある。
このサイバ−エデュケ−ションシステムなるものの可能性についてお話ししたい。
いろいろあったが、私にとってこのシステムの構築は、自分にとって最後にして最大の挑戦だと思っている。
